建築塗装で用いられる添加剤について説明します。塗膜にとって、樹脂は主成分になるものでした。また、顔料は色彩を施す役割を担うものでした。添加剤は、塗膜の性質を微調整するスパイスのような役割を果たします。
スパイスの種類が多いように、添加剤にも多くの種類があります。また、料理に塩をかけすぎると健康に良くないように、塗料に添加剤を多く入れることは塗膜の質の低下を招く可能性があり避けるべきです。と、同時に、人体にとって一定の塩分が必要なように、塗料にとっても一定の添加剤はどうしても必要です。
添加剤は塗料の性質を微調整する役割を担います。例えば、艶消剤という種類の添加剤は、塗料の光沢を抑える役割を担います。
乾燥し塗膜が形成される際に、微細な艶消剤が塗膜表層に浮き上がることで、塗膜表面はミクロレベルでは凸凹の状態になります。
デコボコの状態は光を乱反射するので、ザラっとした質感として人の目には認知されることとなります。艶消剤を混入すると、テカっとした仕上がりではなく、ザラっとした光沢のない仕上がりになるのは、このような仕組みによります。
添加剤は、塗料の製造過程で混入されることもあれば、現地にて塗料に混入することもできます。例えば、艶消剤ですとフラットベースという材料が市販されています。このフラットベースを混入すればするほど、塗料の光沢はなくなっていき、ザラっとした質感に仕上がるのです。
ただし、添加剤によっては塗料の丈夫さを落としてしまう場合も多々あるので注意が必要です。例えば、塗料がテカテカしているのが嫌だからと、フラットベースを多量に混入すると塗料の耐候性(もちの良さ)は低下してしまいます。光沢を抑えることと、長期にわたり丈夫さを維持することとは、トレードオフ(二律背反)の関係に置かれてしまうということをしっかりと認識することが、添加剤の利用に際しては重要です。
乳化剤とは、塗料を均一にする役割を果たします。建築塗装用の塗料というのは、ほとんどがエマルション(乳液)の状態となっています。エマルションとは、水の中に微細な樹脂が混ざっている状況、あるいはシンナーの中に微細な樹脂が混ざっている状況をいいます。この混ざり具合に偏りがあると、塗装した際に形成される塗膜が、部分的に分厚かったり、薄かったり、ひどい仕上がりとなってしまいます。そのため、塗料のどの部分をとっても、水・シンナーに含まれる樹脂の割合が一定となるようにしてあげる必要があります。そのための役割を担うのが、この乳化剤です。
一般的に、シンナーに樹脂を混ぜるよりも、水に樹脂を混ぜる方が難しいものです。そのため、水性塗料(水に樹脂を混ぜたもの)には乳化剤がたくさん入れざるを得ないという問題が生じます。水性塗料は硬化時に、シンナーでなく水が蒸発するため、臭気が少ない環境に優しい塗料であるとされていますが、この乳化剤がたくさん入っているがために、溶剤系塗料(シンナーに樹脂を混ぜたもの)よりも丈夫さの面で劣ってきました。
最近では、乳化剤の研究が進んだため水性塗料でも溶剤系塗料と遜色はなくなってきました。しかし、依然として例えば同じアクリルシリコン樹脂の塗料で比べるのなら、水性アクリルシリコン塗料よりも、弱溶剤アクリルシリコン塗料の方が、若干の長持ちをするようです。環境に配慮しなければならない度合いと、どの程度の丈夫さを求めたいのか。両者を比較考量しながら、水性系にするか弱溶剤系にするか、選択する必要があります。
防カビ剤とは、保存時に塗膜がカビないよう、塗料に混入されます。食品にも、ソルビン酸という食品添加物(保存料)が腐敗を抑えるために利用されていますが、これと同じような役割を果たします。
また、防カビ剤は、湿気の多い箇所に利用する塗料を、塗装後にカビにくくするような役割も果たします。塗膜の丈夫さの観点からは良いものとは言えませんが、それでも保管時の腐敗を抑え、塗装後のカビ発生を抑制してくれるので、なくてはならない添加剤といえます。
乾燥剤とは、乾燥時間を早くするための塗料です。ホームセンターで利用されている合成樹脂調合ペイント(SOP)などは、16時間ほどの乾燥時間を要します。そのため、工期が長くなる、雨が降ってしまい施工がやり直しになるリスクが高くなる、駅構内のシャッターなど施工できる時間帯が限られている箇所の塗装が困難であるなど、乾燥時間が長いということは大いに問題がありました。そのため、メーカー各社は乾燥時間を短くするために、必死に乾燥機構の研究に取り組み、現在では夏場には2時間程度、冬場でも4時間程度で乾燥する塗料が一般的になってきています。
以上、添加剤について詳しく説明してまいりました。ポイントは、添加剤は必要なものであるが、なるべくならば最小限に抑えたいという点です。例えば、艶の選択などの際に、もっと光沢をなくしたい、もっと光沢をなくしたいと、フラットベース(艶消剤)をどんどん混入していってしまうようなことは、避けるべきです。
外壁塗装・屋根塗装は、いま満足できる状況になれば良いというものではありません。時間が経ってみて、長持ちしているか、色あせていないか。そのように未来を踏まえた上での使用材料の決定、施工内容の決定が不可欠です。とことん納得のいく工事にするために、ご不明なことがございましたら、当社まで何なりとご相談ください。