建築塗装で用いられる溶剤について説明します。樹脂は主成分として、顔料は色彩として、最終的に塗膜として残るものです。それに対して、溶剤は塗膜が生成した暁には消えてなくなってしまうものです。
建築塗装の着工時に敷設した足場は、竣工時には解体されてなくなります。それと同じように、溶剤とは、塗膜を形成するために必要な物質であり、塗膜が形成された際には蒸発により消散してしまうものです。
溶剤は塗料が硬化する反応にとって不可欠な物質です。樹脂だけでは塗装できないので、シンナーや水に樹脂が混じったものを塗装し、後でシンナーや水が蒸発することにより、樹脂はしっかりと被塗装面に密着するというわけです。
塗料の丈夫さは、第一には樹脂の成分によって大別されますが、この溶剤が何であるかも塗料の丈夫さを規定する重要な要素です。
溶剤として何を利用するかは、塗料の丈夫さを規定する重要な要素ではありますが、外壁塗装の塗料においては水性系塗料で塗装することが一般的となってきています。
これは、身体に優しい水性系塗料の研究が進んできた結果です。断熱塗料など以外の紫外線の影響を受けやすい一般的な塗料の場合には、屋根には弱溶剤系の塗料を利用するべきであり、鉄部などの錆びが生じやすい部位などにも、弱溶剤系の塗料を利用するべきです。
強溶剤のシンナー中に樹脂が混入してある塗料、希釈する際には強溶剤のシンナーを利用する必要がある塗料のことを、強溶剤系の塗料といいます。
橋梁やタワーなど、絶対に錆びてはならないような部位には強溶剤系の塗料を塗ります。もしくは、既存の塗膜が余りにも脆弱であるような場合には、強溶剤系の塗料を載せて古い塗膜がベロベロに剥がれてくるのを削ぎとるようにしながら工事することが必要になることもあります。
塗料はそのままの状態で塗りにくい場合には、シンナーにより希釈(薄めること)をします。その際に、強溶剤系の塗料は、強溶剤用のシンナーにより希釈する必要があります。具体的にはラッカーシンナー・ウレタンシンナー・エポキシシンナーなどです。
また、強溶剤用のシンナーは塗装作業以外にも用いられます。臭いが強烈であるものの、塗膜を溶かす力は絶大であるため、塗装職人が刷毛(はけ)や塗装器具を洗浄する際にも、ラッカーシンナーは用いられることがあります。
弱溶剤のシンナー中に樹脂が混入してある塗料、希釈する際には弱溶剤のシンナーを利用する必要がある塗料のことを、弱溶剤系の塗料といいます。NAD形塗料、非水エマルション塗料とも呼ばれます。また、灯油に近い成分のターペン(石油化炭化水素)により希釈されているために、ターペン可溶形塗料とも呼ばれます。
断熱塗料以外の紫外線の影響を受けやすい塗料により屋根を塗装する場合、または鉄部のように錆びやすい部位の塗装をする場合には、弱溶剤系の塗料を塗ります。
塗料はそのままの状態で塗りにくい場合には、シンナーにより希釈(薄めること)をします。その際に、弱溶剤系の塗料は、弱溶剤用のシンナーにより希釈する必要があります。塗料用シンナーAを用いることが一般的です。塗装職人は、塗シンと略します。
この記事を執筆している人間は郊外の塗装会社で働いており、都心に出ることも少ないのですが、見栄をはって「よく塗シンを利用しています」などと口にしています(笑)
ところで、シンナーとはthinnerであり、石油系の「うすめ液」のことです。DIYショップ(ホームセンター)では、「うすめ液」の名前で取り扱われていることが一般的です。強溶剤系の塗料を希釈する際には、強溶剤用のシンナーで薄めることが必要です。また、弱溶剤系の塗料の場合には、弱溶剤系の塗料で薄めることが必要となります。